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君子危うきに近寄らず~#1 身近に火の手 編~  by  A.K.I

2015/11/12 10:00

君子危うきに近寄らず~#1 身近に火の手 編~
 by A.K.I



 外国で生活するにあたり、異国とはいえ人々が日常生活を営んでいる環境なのだから大概のことはなんとかなる、というのは確かに事実です。とはいえ、日本ではあまり起こりえない状況にも多々遭遇し、戸惑いや不安を感じるというのもまた事実。
 自然災害のようにどうにも避けようのない事故というのは国内外問わずもちろんあり、その他事象についてもここジャカルタでは、実際にはどうしようもないように思われることが多かったりもしますが、日本の常識を覆すことが起こり得るという事実だけでも知っていれば、多少の心構えと予防策を講じられる場合もあろうかと思います。
 日本に居てはインドネシアの日常生活における話題が取り上げられることも多くは無いので、私自身来てみて初めて知る状況も多く、かなり衝撃的でした。ジャカルタでの実生活上でリアルに危機感を持った出来事をピックアップしてみます。数えだすと次々と出てくるので、まずは、‘火’にまつわる見聞録です。
 
1.身近に起こりうる火事



 数か月のジャカルタ滞在で、ボヤも含め実際に火が上がっているのを既に2度も目の当たりにしました。一度目は、アパートのベランダから見えるローカルな住宅地で、空き地に不法投棄されたゴミの山からあがっている火(写真)。近所の住民が相当な時間懸命に水をかけて消火にあたり、最終的には火が消えたから良かったものの、消えそうになかったら通報すべきか?と正直迷いました。昼間で気づいた人がいたから良かったようなものの、火災報知器などあるわけもない空き地で、夜間の発火だったらと思うと怖いです。周囲は消防車が入れるのかも疑わしい道幅だし、付近にはプロパンガスを積んだ屋台も並んでいたように思うし、第一消火に水だけ…?そういえば住んでいるアパートも部屋には消火器の設置が無いことに今更ながら気づき、スプリンクラーが設置されていることと、廊下には消火器が設置されていることを再確認。
  二度目の目撃は、消防車のサイレンがあまりにも激しく鳴り響いているので外を見てみると、遠くのビル群の一角に目視で捉えられるくらいの火の手が。火事を目撃するなんて日本では経験したこともありませんでしたし、短期間に2度も目撃するとはかなり高頻度。新聞にも毎日のように火災のニュースを見かけます。



 日本でも火事は起こり得る事故ですが、ジャカルタで少々怖いと感じるのは、上記のようなゴミの山の発火もありますが、ビル火災の出火原因としてよく目にするのが、ガスボンベの爆発や電気系統のショートであるという点。アパートの台所もプロパンガスのガスボンベ設置が一般的なので、ガス漏れには要注意!コンロの火を付けようとしたとたん火が広がって全身やけどを負い、病院に運び込まれてきたといった事例も病院関係者から聞いて、しばらくコンロの点火を躊躇してしまったくらい。
 先月には、ジャカルタ中心部で広く知られているサリナ・デパートにて火災が発生。最上階のカラオケ店内調理場のガスボンベ爆発が原因で、ビルにいた人々は避難し幸い死者は出なかったものの調理場は全焼。ちょうどお土産物探しに行こうかと思っていた前日だったので、命拾いした気分。以前、英語圏ではない国に行って間もない時期に避難訓練に参加したのですが、現地の言葉で何を言われても全く理解ができず、これでは実際に事故に遭ったら、状況を正確に把握できず逃げ遅れる可能性が大いにあると不安に感じたことを思い出しました。



 電気に関しても実際に数か月前、アパート全体的には電気が灯っているのにうちのユニットだけが突如停電。確認してもらったら、ブレーカーが落ちただけでなくそのパーツが焦げていて、要部品交換とのこと。また別の日には、部屋の電球が点灯時にバチバチと音が鳴るのが気になり、電球を取り替えようかとはずしてみたら、電球の口金部分が黒く焦げてる!早速こちらもソケットの交換をしてもらいました。
 電気系統の部品が焦げているのなんて、日本では見聞きしたたことが無かったのですが、焦げているということは、一歩間違えば火事になった可能性もあるわけで、電気系統のショートによる火災というのがあり得る現実を身近に感じました。
 
 このように、日本ではありえないと思われる状況で火災が発生する可能性が、普通の日常生活の範囲内に存在します。電気やガス等、何か異音や異臭が気になった場合には火災の危険も念頭に、先送りせず早めにメンテナンスを依頼することをお勧めします。そしてやはり、緊急時の情報の収集には多少のインドネシア語は理解できた方が不安は軽減されるであろうと思います。
 
2.人的災害である森林・泥炭火災



 スマトラ島・カリマンタン島で8月頃から数か月に渡り大問題になっている森林・泥炭火災。今もなお、近隣諸国含め広い範囲に煙害(ヘイズ)をもたらしています。長引く乾期に手をこまねいていたところへようやく雨期到来の兆しで、やや状況改善の方向へ動きだしたようではありますが、熱帯地方のざっと短時間のスコール的な雨では表面が湿るくらいで、地中十数センチまでくすぶっている泥炭が完全に鎮火されるまでにはまだまだ至らず。完全な鎮火までにはまだ当分かかりそうです。
 煙による健康被害では死者も出ているほど。また煙による視界不良で、長期閉鎖されている空港も複数あり、これまでに主要航空会社の約5,000便もが欠航となり、人々の足や物資輸送にも大きな支障が出ています。火災発生地域では学校の休校や、地域住民の避難も行われていますが、カリマンタン島のオランウータンはじめ野生生物も森林焼失により住処を失い、生態系の破壊も深刻です。
 9月末にスラウェシ島へ旅行に行き、希少動物が見られるというタンココ自然保護区の散策を楽しみにしていたのですが、ここでも山火事が発生していて、いよいよ明日という前日の夜に入山禁止令が。お目当ての散策が突如中止となりがっかりでしたが、これまた初めて山が燃えているところをバスの窓から目撃し(写真)、火や煙にまかれる危険も考えると中止が賢明であると納得。スラウェシ島でまで森林火災が発生しているとは、事前のニュースでも見かけなかったのですが、しばらくたってから、スラウェシやパプアでも森林火災が起こっているとのニュース報道。インドネシアに居てもインドネシア全土の正確な情報は得にくいということも、少々日本との環境の違いを感じます。



 森林・泥炭火災は、パームヤシプランテーション農園において、手っ取り早く農地拡大ができ、焼けた植物が肥料となるため化学肥料の手配が不要(低コスト)ということから、常習的に行われている人為的な野焼きが最大の原因と言われていますが、今年は特に長引く乾期のため泥炭の乾燥がひどく、森林火災のみならず、なかなか火の消えない泥炭火災が問題を大きくしています。ヘイズだけでなく、二酸化炭素の放出量も甚大で、これほどに国際的にも大問題になっていて、日本はじめ各国の援助もあるにもかかわらず、3か月以上もほんとうにどうにもできなかったのか?と、いささか疑問にも思ってしまいますが、ホットスポットが多数見られる農園の開発業者を摘発したり、野焼きを認める法の改正の検討など対応策が進められてはいるようです。規模の大小はあれど、毎年乾期には繰り返し発生し続けている問題とのことなので、早々の改善を望みます。
 
 スラウェシ島やカリマンタン島自体はもちろんのこと、風向きの関係で、シンガポール・マレーシア・フィリピン等の隣国がヘイズの影響をダイレクトに受けていますが、風向きの変わった先月には、ジャカルタのあるジャワ島でも煙が認められました。
 ちょうどそのころ、咳が止まらなくなってしまった私は日本へ一時帰国をしたのですが、日本に着いた途端おもしろいほどにピタッと咳が止まったので、もともと大気汚染のひどいジャカルタで、流れてきた煙に追い打ちをかけられての咳だったのでしょうか。大気汚染に起因する一時的な喉の痛みや咳などの症状は、汚染状態が改善されれば治まるもののようですが、長期に及ぶと慢性化してぜんそくになってしまう恐れもあるそうですので要注意。ヘイズ被害が懸念される乾期に、該当エリアに滞在するにあたって気を付けるべき事項は、日本での光化学スモッグ発生時の対応と同様。
・外出や屋外での運動の軽減/回避
・外出時のマスク着用
・帰宅後のうがいと手洗い/洗顔や入浴(シャワー)もこまめに励行
・室内の環境整備(加湿、空気清浄機の使用、エアコンのフィルター交換・清掃、床の拭き掃除など)
等の対策が、多大な被害を受けているシンガポールでは推奨されています。災害の張本人インドネシアでは、こういった対応策が告知されているのを今のところ見つけられていません。現地の人たちには、こういった情報・知識は浸透しているのだろうかと心配になります。インドネシア語での情報がどこかにあるのかもしれませんが、全体的にまだまだインターネット普及率も高くは無いようで、災害情報にかかわらずインターネット検索で得られる情報もまだまだ不十分と感じます。
 
3.どうにもしがたい自然災害、火山の噴火



 人的災害に対しては政府も対策を検討しており、早期の改善が課題ですが、自然災害だけはどうしようもありません。先日も、ロンボク島のバルジャリ山の噴火があり、火山灰による視界不良でバリ島の空港閉鎖が報道されていましたが、ジャワ島のラウン山もこの夏にはたびたび噴火し、風向きによってバリ島の空港閉鎖が頻繁にあり、観光産業メインの島だけに大勢の観光客が足止めにあいました。
 実際に、7月にジャカルタからバリ島への飛行機に乗った際、空港閉鎖は解除されていたのでもう問題はないのであろうと思い込んでいたのですが、ラウン山がまだモクモクと煙を噴出しているのを飛行機の窓から目撃した時には、大自然の脅威を感じました。到着したバリ島で出迎えてくれたガイドさんは、よくあることと慣れた様子でしたが、噴火した火山近隣の住民の避難状況等のニュースはまったく聞こえてこず、気になるところです。

 日本でも近年、箱根や小笠原諸島・西之島、御嶽山島など火山活動が活発で、さまざまな方面で大きな被害が出ていますが、活火山が130にものぼると言われるインドネシアにおいても、火山列島にいるのだということを認識し、火山の情報にもアンテナを張っておいた方が良さそうです。

追伸 : 飛行機が飛ばないことは日常茶飯事



 インドネシアの飛行機ですが、実際のところ、遅延は当たり前、欠航も珍しくないといった運行状況です。前述の煙や火山灰による空港閉鎖でやむをえず飛行機が飛ばないというのは仕方がないにせよ、そうでなくても普段から遅延やキャンセルが頻繁に発生します。日本ではそこまで大きな変更が生じるのは、これまた自然災害である台風や大雪の時くらいかと思うのですが。
 機体の整備のため、一旦搭乗した飛行機から降ろされ乗り換えさせられたことや、さんざん待たされた挙句、その日はもう飛びませんと告げられるようなことまで、その後の予定に大きく響くということも全く容赦無し。エンジントラブルでと言われると、飛んでくれなくてよかった!と逆に胸をなでおろしたりもしますが、インドネシアでは飛行機は定時には飛ばないものというくらいの気構えでいた方が、気持ち穏やかに過ごせます。

 避けようもない事態も多いので、タイトルを変えようかとも悩みましたが、身の安全を守る基本ということで、’君子危うきに近寄らず’ 更に続きます。

 

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