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魅惑的なインドネシアの布、布、布! by A.K.I 2017/04/11 11:10 |
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魅惑的なインドネシアの布・布・布! by A.K.I みなさま、”布”にはお詳しいですか?日本にもその地域によって、例えば北の方から厚司織、津軽こぎん、南部裂織、越後上布、小千谷縮、加賀友禅、真岡木綿、江戸小紋、丹後縮緬、西陣織、、大島紬、琉球紅型、宮古上布などなど、染め布あり織り布あり、その地域の気候風土・文化を象徴する独自の素材・織り方・染め方・モチーフが受け継がれた、風合いの異なる布が数えきれないくらいあります。インドネシアも同様に、地域性の強い独自の布文化が各地で華麗に花開いています。そして何より、日本では和服を着る機会がどんどん減少し、それに伴い布文化の継承も厳しくなりつつある憂うべき現状がありますが、インドネシアではまだまだ日常生活の中に布文化が息づいているところがまた魅力です。 そんな、どこへ行っても触れずにおくわけにはいかないインドネシアの”布”ですが、自国日本の布だけでも把握しきれないほど奥深いところへ、人様の国の布文化を一朝一夕に把握することは到底不可能。ジャカルタに来てからというもの、ありすぎる布に翻弄されっぱなしだった私が、今だからこそ、これからインドネシアの布に接するという方が途方に暮れないように、まず押さえていただきたいと思う大分類3つ。”バティック” ”イカット” ”ソンケット”。そして、衣装として欠かせない女性の伝統ブラウス ”クバヤ” をまずはご紹介したいと思います。少しでも知っていればジャカルタでの日常がより楽しくなる、魅力的なインドネシアの布の世界へどうぞ! 1.染め布の代表選手 "バティック" 日本の布にも、独自の技法を用いた染めを特徴とする布(江戸小紋・京友禅・京鹿子・琉球紅型etc.)がありますが、ここインドネシアで布の代表といえば、2009年に無形文化遺産にも認定された染めの布 ”バティック Kain Batik" です。溶かしたろうを置いた部分が防染され白く染め抜かれる、”ろうけつ染め”と呼ばれる技法を用い染めあげられるこの布。根気を要するこのろう置きの手作業は、古くは宮中の女性のたしなみとして行われていたそうで、王宮文化が今も生きるジョグジャカルタやソロ、チレボンのバティックは王宮禁制柄など精緻で独特なモチーフが多く見られます。 一言に ”バティック” と称されるものの、その持ち味は幅広く、地域によってモチーフや色彩などに異なる特徴があるところが、布好きの心を掻き立ててやまない一因。例えば、冒頭の写真の茶褐色の色彩は、ソガン染めと呼ばれるジョグジャカルタやソロ特有の色合いです。下の写真はイモギリというエリアのもので、もう少し淡い色彩でモチーフも柔らかさがあり、この2つを比べただけでも大きく違いが感じられると思います。これらエリア含め、ジャカルタもあるここジャワ島に主要な産地がたくさん点在しているため、バティックは日本語では ”ジャワ更紗” とも呼ばれています。 本来 ”バティック” と呼ばれるものは、ろう置きの工程が手描きによるもの(Batik Tulis)もしくは、モチーフを型どった金属の型を用いてずれないように手捺しされたもの(Batik Cap)、またはその組み合わせ(Batik Kombinasi)により施されたものを指し、手間暇がかけられた手工芸品だけにお値段ももちろんそれなりにしますが、日本の着物の生地と同様に、一枚一枚がすばらしい芸術作品です。 一方、手軽に市場で売られている安い生地は、バティックのモチーフを取り入れてプリントされた、バティック柄プリント(Sablon)で、厳密にはバティックとは呼びません。これらはもちろん、手描き・手染めのバティックの素晴らしさには到底及びませんが、それでも、バティックという伝統文化を人々が意識し、その柄を手に取り気軽に身に纏うということは、その文化に目を向け絶やさないという姿勢につながる大事な役目を果たしていると感じます。式典などでは正装として着られ、また普段着としても、そして特にバティックデーとされる金曜日には、プリント製品であったとしても、自国の柄・文化として人々がカラフルな布を思い思いに着こなしている風景はなかなか素敵です。 ろうけつ染めの技法は日本でも沖縄の ”琉球紅型” に用いられていますが、その他インドネシアに見られる染めの布として、絞り染めの技法が取り入れられているものも見られ、絞りの技法も日本でも良く使われている技法であり、その共通性にも興味惹かれます。 2.織り布の総称 ”イカット” 布に図柄を呈する方法を大きく分類すると、”染め”と”織り”ということになりますが、次に織りの布をご紹介します。布にするための糸をまず図柄を元に染めて、その糸を織ることで柄が浮かび上がってくる織りの布、いわゆる ”絣” は、上の写真手前に見えるように、防染したい部分を一つ一つ紐で括るわけですが、この ”括る” という単語がインドネシア語で ”ikat” 。それが織りの布を”イカット”と呼ぶ由来です。ところが、私の発音が悪いのか、現地ではそのように言わないのか、”ikat”と言っても通じないことも多く、”織る” のインドネシア語 ”tenun”という単語を使った方が伝わったりする場合もありますが、日本人がインドネシアの織りの布を語る時には”イカット”と呼ぶことが一般的でしょう。 実際には、バタック人の布 ”ウロス”、スンバ人の ”ヒンギ・コンブ”、バリ島トゥンガナン村の ”グリンシン” など、それぞれの地域で用途や染の色、織り方などによって、もっと別な呼び名があったりもします。日本でも地名や技法から ”越後上布” ”結城紬” ”黄八丈” などそれぞれに名があるのと同じですね。 イカットといえば、その図柄が物語性のある絵巻物のようだと一時大注目を浴びたスンバ島の布が世界的にも有名ですが、そもそもは儀式用であったり、家族のために想いを込めて織られていたりと、モチーフにもそれぞれ意味合いがあり、従来は実生活の中で大変重要な意味を持つ布です。最近では観光客目当てに、やや簡略化された図柄を合成染料で染めたものも出回っているようですが、もし丹念に天然の染料で染め織られた由緒正しき布に出会った時には、それ相応の敬意をもって手にしなければならないなぁと思ったりします。 人や動物をモチーフにしたものや、幾何学的な模様が織り込まれたものや、これもまた島や地域によって、全く異なる特徴の魅力的な織りの布が見られます。これら布の多くは、日本では地機(じばた)と呼ばれる、床に座り腰に当てた板で糸の張り具合を調整しながら織る織り機が今も使われていて、産地の村を訪れると家の縁側のような場所で、心地よいリズムを刻みながら機を織る女性の姿があちこちで目にとまります。織り機が腰幅であるので、写真のような大きな布は真ん中に縫い目があり、腰幅の布2枚がつなげられているのも特徴です。 3.金糸・銀糸・色糸で豪華絢爛"ソンケット" もう一つ良く遭遇する布がこれ。織りの布の一つではありますが、浮き紋織りと言われる、地糸とは別の糸を浮かすように織り込み、華やかな模様を作り出す技法で、金糸・銀糸・色糸が使われて独特の表現と風合いを有す布です。この技法のことも、またこの技法で織られたこれら布のことも ”ソンケット Songket” と呼ばれ、その豪華さが大変目を引きます。 バリ舞踊の踊り子が衣装として身に着けているきらびやかな布もこの一種で、バリ島でも盛んに作られていますが、スマトラ島でも染めの布よりもイカットやソンケットをたくさん見かけました。ティモール島やフローレス島の、色糸で花や星がちりばめられたデザインや、さらには貝殻やビーズで装飾されたものなども個人的には大変興味惹かれます。 一言に織りの布と言っても、そこから生み出される布の個性はほんとうにさまざまです。そしてそんな布を中心に垣間見える各地方・民族の独自の文化へとまたさらに興味が広がっていきます。 4.繊細な刺繍レースが素敵な伝統ブラウス”クバヤ” 最後に、布の種類という括りには入らないのですが、布に着目していった際に必ず、この素敵なレースはいったいなんだろう?と気になること間違いなしなので、ここにご紹介しておきたいのが、”クバヤ Kebaya” と呼ばれる、インドネシアの伝統的な女性用のブラウスです。袖口や、襟元から裾にかけての繊細なレースに目が釘付けになってしまうのですが、この素敵にあしらわれたレース模様、編まれた物ではなく、刺繍で作り上げられているのだそうです。 女性の正装として、上述バティックやイカット、ソンケットをスカートのように巻いた際に、合わせて着る上着がこのクバヤです。最近ではデザインのバリエーションも広がり、ジーンズに合わせるなど今時のファッションとの組み合わせで着られたりもしています。真っ白な綿の生地に同じく白い糸で刺繍された清楚なものから、レース生地にさらに刺繍をほどこしたエレガントなもの、またカラフルな多色の糸で刺繍されたポップな感覚のものまで、その美しい描写に目を奪われること間違いなしです。 <まとめ> インドネシアの布については、専門家が分厚い書籍を何冊も出すくらい奥深いものなので、今回のご紹介はその世界を知るとっかかりとしていただければと、ほんの入り口だけではありますが、異なる布の大枠をざっくりとまとめてみました。私自身、これら布の魅力に相当惹きつけられてしまい、かといってまだフォーカスをピンポイントに絞りきれず、まだまだあれもこれも知りたくて、とにかく布の展示会や、旅先では布市場に足を運ぶなど、実物を見て触れることにより、だんだんと地域ごとの布の特徴が見えてきて、ますます面白さを感じているところです。 今回掲載の写真もほんの一例にすぎず、同じバティックと呼ばれる染布であっても、全く違った印象のモチーフや色彩のものもまだまだあります。最初は物珍しくてついつい手元に置きたくなり、私自身よく知らないままあれこれ購入してしまったりもしたのですが、今にして思えば、そんなに焦らずとも、もう少し吟味していれば隣にもっとお値打ちなものがあったのになどという反省も多々あり。もしも長期在住のご予定であれば、多少気になる布があってもすぐに飛びつかず、しばらくはいろいろと見て回り、知識を深め、自身の好きなタイプのものの中でも、本当に良質で長く愛用できる素敵な布を選んでいただけたらなぁと思います。一期一会ともいうように、出会った!と思えたら逃さず直感で手に入れるというのも一つではありますが。 |
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