ジャカルタ・トピックス_Oktober2017
by A.K.I
日本ではもう朝夕はやや冷え込み、紅葉の美しい季節の到来ですね。毎回どうしても書いてしまうのが、あー、日本は秋か。といった日本の四季の移ろいへの恋慕。そこだけはどうにも、常夏のジャカルタに居て私が最も欠乏感を感じてしまう部分です。日本にいらっしゃる皆様には、是非そんな贅沢と言っても良いくらいの自然の恵みを、大切に心行くまで満喫いただきたいものです。
さて、2ヵ月毎にホットな情報をお届けしている”ジャカルタ・トピックス”。季節の変化は乏しいですが、発展の真っただ中にあるこの国の変化はなかなか多様です。最近タイムリーに盛り上がっている出来事や、身の回りで実際に感じられた変化や気づきを今月もピックアップ。ちょっぴりジャカルタの”今”を感じてみてください。
1. 各地で盛り上がる独立記念日
今年は暦の組み合わせ具合から、6月末のルバランから数か月、インドネシア国内、どこかそわそわした熱気のある空気が続いていました。8月17日は独立記念日。いたるところに紅白の国旗がたなびき、たくさんの催し物が開催されました。一つの恒例イベントは、皆でこの日を祝うために各町内会で行われる運動会で、私はこの日、西スマトラにいたのですが、山間の小さな村でも大勢の人が集まり、数メートルある棒のてっぺんに備え付けられた賞品を手にするべく、油が塗られ滑る棒を昇る競争や、ウナギの手づかみ移動競争、クルプック食べ競争、綱引きなど、懐かしいような目新しいような様々な競技が、大盛り上がりで繰り広げられているのを目撃し、この国にとってこの日が大変重要な日であるということを、再認識しました。
8月末、マレーシアで開催の東南アジア大会のガイドブックに掲載されたインドネシア国旗が、上下逆さまになっていたというミスに、国を侮辱されたとしてインドネシア国内ではデモが行われるなど大きな反響がありましたが、メラ・プティ(赤・白)と呼び親しまれるインドネシア国旗は、独立を果たしたこの国の人々の誇りとも感じられる旗。赤が上、白が下の2色旗です。みなさまお間違えのないように。
2. 犠牲祭“ポトン・カンビン”の日
そして8月末はムスリムの聖地メッカへの巡礼の時期で、そんな大事な巡礼ツアーで旅行代金が騙し取られるという詐欺事件も大きく報道されましたが、巡礼のピークを迎える9月1日は、ムスリムにとって大切な伝統行事の一つである犠牲祭(イドゥル・アドハ)でした。ジャカルタの街中でも以前はこの日が近づくと、道路脇の空き地等にチラホラと牛やヤギが売られるのを見かけたものですが、昨年に引き続き今年はめっきり見られなくなったと思っていたら、衛生上の問題などから路上での販売が禁止され、州政府が設置した売り場に集約されたのだそう。むしろ昨今では、牛やヤギでさえオンラインでの購入が増加しているといった状況もあるようですが。とはいえど、一歩通りを内に入ると今でもまだ、空き家の前で突如大きな牛が草を食んでいたりということもあり、これが時代と共に全く見られなくなってしまうとしたら少々寂しい気もします。
ちなみに、牛やヤギ1頭のお値段なんてご存知ですか?大きさによっても幅はありますが、手元に残しておいた広告によると、ヤギ(23-28kg)でRp2,000,000(約¥20,000)、牛(250-300kg)でRp13,500,000(約¥130,000)といった感じです。何人かでお金を出し合って共同購入したりもするそうですが、これら家畜は犠牲祭の日、朝のお祈り後に捧げられ、イスラムのしきたりに則って賭殺・解体されて、普段肉を買えない恵まれない世帯などを中心とした近隣の住民に分配されます。ムスリムが大事にする”喜捨”が大々的に行われる重要な行事なのです。”ポトン・カンビンの日”と人々は呼んでいますが、まさにモスクや広場や街のあらゆるところで、カンビン(=ヤギ)などがポトン(=切る)されます。
これだけ聞くと残酷な印象を受けますが、私、今回実際に見に行ってきました。ベジタリアンの方以外は、皆さん日常的にお肉を食べられると思いますが、そのお肉がスーパーに並ぶには、目に触れる機会はなくとも、実際に動物をポトンする役割を担っている人がいるわけです。私もこれまで、何気なくスーパーで買って食べてきましたが、実際にその過程を見ることで、こうやって一つの命をいただいているのだなぁというありがたみをしみじみ感じました。職人技で、ものすごい手際の良さで、残酷と感じるような空気は無く、可食部は大切にすべて綺麗に処理して切り分けられていきます。苦手な方もいらっしゃるかとは思うので、写真はモノクロにしましたが、もし次に機会があれば、見に行かれるのも良い経験になると個人的には思います。
3. 徐々に増えつつある歩ける歩道
牛の路上販売が禁止されたことも、街の整備の一環と言えると思いますが、ジャカルタ市内のいくつかのエリアで、ちゃんと歩ける歩道が少しずつ、でも着実に増えていっていることが感じられます。実際のところこれまでの歩道は、”歩道らしきもの”と形容するしかないくらい、そのど真ん中に南国の樹がすくすくと育ち道を遮っていたり、突然大きな穴が空いていて危うく大けがをするところだったり、歩いていくと突如歩道が消滅して、その先は勢いよく行き交う車やバイクに怯えながら、恐る恐る車道脇を歩くしかなかったり。人為的なところでは、歩道であるはずのエリアに、庶民の食を賄うカキリマ(屋台)が当たり前のように店を構えていたり、ずらりとバイクが止められていたりで、実質”歩道”と呼べるような状態ではなかったのです。
掲載した写真では、歩道として十分な道幅が取られたものの、まだブロックの並び目がデコボコなところが気にはなりますが、場所によっては綺麗に平らで点字タイルも敷かれている所も出てきました。また、もっと歩きやすく観光スポットとして整備すれば本当に素敵なところなのに、と多くの人が思っていたであろう、オランダ統治時代の建物が残り風情のあるコタ・トゥアも、歩行者専用道路の拡張整備が進められており、10月からは目抜き通りであるタムリン・スディルマン通りでも、街路樹を公園などに移植し、歩道を拡張し街灯を設置していく工事を順次進めるとのことです。また、路上の違法駐車の取り締まりも強化される予定です。
2018年8月にアジア大会がジャカルタとパレンバンで開催されるのを機に、街の整備が目に見えて進行中です。日本も、東京オリンピックが開催されたおかげで街が整えられたと聞きますが、かつての東京も今のジャカルタのような建設ラッシュで目まぐるしい時代があったんだろうなと、知らない自国の過去を実体験しているような気分になったりします。
4. 新バジャイは4輪車
近頃よく目にするようになった、新型の4輪車バジャイ。7月末から試験導入されたのですが、なかなか急速な普及を感じます。この新型バジャイはさらに、ゆくゆくはエアコン完備、オンライン決済を導入する予定もあるのだとか。これまでの少々錆びてガタついた感のあるベモや、ここ数年で導入された圧縮天然ガス(CNG)を燃料とする青色3輪車バジャイとはがらりとイメージが違って、この4輪車ミニカーはいかにも新しさを感じさせるつるんとした光沢を放ち、趣のある町の風情に一役買っていたこれまでのバジャイとは全く異なる印象です。
オレンジ色バジャイが姿を消して、街の色彩が一気に変化したのに続き、また街の空気が変化していく気配に、移りゆく時代を感じさせられます。ほんのここ数年でこれだけの変化なので、数十年単位でご滞在の方々はさぞかし大きな変動を目の当たりにしてこられたのだろうなぁ、と思う今日この頃です。
5.麻薬が大きな社会問題
もちろん、読者の皆様からからは隔たった話題ではありますが、昨今テレビのニュースであまりにも頻繁に登場するので触れておきます。”Narkoba=麻薬”。今、インドネシアでは覚せい剤密輸の問題が大きく取りざたされています。今年7月14日に覚せい剤1トンがバンテン州アニュエル海岸で押収された事件以降特に、麻薬取締法違反容疑または現行犯逮捕、その際に抵抗した犯人を射殺といったニュースがほんとうに頻繁に聞かれます。
2016年の1年間に中国産覚せい剤約250トンが、香港・台湾・マレーシア人の関連や経由ルートで密輸されたとの発表があり、インドネシアに大量密輸されるようになっている主な要因は、常習者の多さ(2016年だけで600万人)と、中国の10倍近い価格で取引されていること、麻薬犯罪の取り締まりが強化されたフィリピンから密売組織がインドネシアに流入しているといったことが言われています。
大量の麻薬が押収された場所としては、スマトラ島のアチェ州、南スマトラ州パレンバン市、ランプン州ランプン市、そればかりか中部ジャワ州スマラン県、北ジャカルタ・プルイットやパンタイ・インダ・カプックといった地名も聞かれますし、西ジャワ州ブカシ市市警は、7月26日~8月9日の2週間で麻薬取締法違反の疑いで36人を逮捕したという発表もしていて、あまりにもエリアが身近です。
9月中旬には、東南スラウェシ州クンダリ市で小中学生らが覚せい剤を経口摂取したとみられる集団急性薬物中毒で搬送されるという事件が発生。関係したとみられる合成麻薬などを密売していた8人を逮捕といったニュースも聞かれ、守るべき子供達の身近にまでそんな危険が隣り合わせということに唖然としました。薬物依存リハビリ施設の需要も増えているそうですが、依存症から更生した人のインタビューでは、子供の時から身近に簡単に手に入ったし、誰にも止められたことがなかったいった内容を話されていて、ちょっとショッキングでした。
6.乾季の火災
ここのところジャカルタでは、どうやら雨季の到来か、毎日のように激しい雨が降っています。ですが、9月20日時点での気象庁の発表で、約2か月以上降雨のない地域がジャワ島だけでも西・中部・東ジャワ州で計54郡にのぼるとのことで、飲み水不足や農地の被害など、今年の乾季の干ばつ被害はかなり深刻さを増しています。日本でも乾燥しやすく暖を取るための火気も増える冬期には、火の用心の声がいつも以上に聞かれますが、インドネシアでのこの乾季、やはり火災のニュースも多いです。実際にここ2ヶ月で、2回大きな火があがる火災をこの目で身近に目撃しました。
乾季にいつも問題となる火災のもう一つは、森林・泥土火災。特にスマトラ島やカリマンタン島では農地開墾のための焼き畑が根強い主要因で、有機肥料配給などの策を講じつつ、野焼きを行っている企業の取り締まり強化なども実施されていますが、なかなかホットスポットの減少は見られず、延焼拡大と深刻な煙害被害が今も報じられています。また、東ジャワ州にあるブロモ・テンゲル・スメル国立公園では森林火災の発生で、固有種も見られる生態系への影響が懸念されています。さまざまな被害が広がる中、まさに、恵みの雨が待たれる状況です。
<まとめ>
昨今のジャカルタ事情、いかがでしたか?日本で人気のバリ島で、活火山アグン山の活動が活発化し、噴火が警戒され避難勧告が出ているということで、少し日本の目もインドネシアに向いているかもしれませんが、実際にここのところすでに繰り返し噴火している北スマトラ州のシナブン山の名も、そろそろ記憶に定着してきたでしょうか?
メディアの情報にも偏りや限界があるので、日本に居てはわかり得ない現地情報もたくさんあります。少しでもリアルなインドネシアを感じていただけると何よりです。
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