こんなに違う!日本とインドネシア
by A.K.I
年末年始、一時帰国で半年ぶりに日本に帰って来ました。空港から出て久しぶりに味わう日本の冬の早朝の冷たく研ぎ澄まされるような空気に、寒いという思いよりも前に懐かしい喜びを感じ、サービスが行き届いていて何でもスムーズに事が運ぶという日本では当たり前の出来事にいちいち感動し、日本語が飛び交いストレスなくやりとりができる環境に気持ちがふっと解放される感じがして、もう慣れた気になっていた異国の地で日々いかに気を張って過ごしていたのかということを実感するなど、瞬時にさまざまな思いが駆け巡りました。
自由に自分の足で好きな時間に一人で歩き回れるこの快適さも、そして何と言っても異国の言葉で頭をフル稼働させなくても自分の言葉でスムーズに人と意思疎通ができ、街中に書かれているあれこれも読めば即理解できるという、住んでいれば当たり前だったこの感覚すらも、何とありがたいことかとしみじみと思わされます。
今回はそんな、これまで当たり前と思っていた日本の日常の中で、インドネシア生活が基準となっている今の私の目には改めて新鮮に映った、日本とインドネシアの違いをお伝えします。
1.四季の恵みとファッション
常夏。この感覚は、冬の日本から数日間旅行でインドネシアに行ったくらいでは理解できるものではなく、結局のところ1年を通してその土地に住んでみて初めて分かり得る感覚だと思います。365日暑い。それはこの豊かな四季に囲まれた日本の環境とは大きな違いをもたらします。空気に秋の訪れを感じる!そんなこともありません。冬のコートを出さなきゃ!そんな衣替えの必要も無ければ、菜の花のお浸しが食卓に出て春を感じる!そんな季節の移り変わりを楽しめる旬の食材というのもざっくり言えばありません(雨季と乾季で市場に出回るフルーツに若干の変化は見られますが)。在イ歴が長い人の中には、変化が無いことが楽で良いとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私はやはりこの日本の四季折々の変化を恋しく思います。
冬というインドネシアには無い季節。こんなパリッと空気が冷たく吐く息が白いなんて感覚があったことすら忘れていました。すっきり晴れた冬の青空。インドネシアの陽射しは強烈でサングラスをかけなければ目が痛くて仕方がないのですが、こんなに晴れていても日本の陽射しはやさしくサングラス無しで大丈夫。もしかすると赤道直下の陽射しの強烈さだけではなく、ジャカルタのひどい交通渋滞による排気ガスの光化学スモッグで目が痛かったのかもしれません。
日本の風景が目に優しいと感じるもう一つの理由。それは街行く人々が身を包むコートの色のほとんどが、黒、ベージュ、グレーといった落ち着いた色合いの無地のモノトーンであること。柄オン柄、それも奇抜な鮮やかな配色のインドネシアンファッション、さらには頭のてっぺんから全身をたっぷりの布で覆うムスリムファッションを見慣れた目には、日本的ファッションはなんともおだやかにその反面かなり地味に映り、一見没個性と言われるのもやや納得はしますが、その分デザイン含めこまかなおしゃれが発達している感じがします。ウールのふんわりと暖かい感覚を楽しむなど素材の幅も豊かな四季のある国と違い、夏服しかない南国の人々は、その色彩や柄に楽しみを見出しているということなのかもしれません。
2.正確な時間感覚と車内アナウンス
日本人は時間にきっちりしている。それも巡ってくる季節の変化に事前に備える感覚から来ているのかもしれません。今日も明日も暑い南国では、時間の感覚がゆるやかになるのがわかります。急がなくても何も変わらない。気候に変化が無いから時間にメリハリがなく、実際に今何月なのか、あの出来事があったのは果たしていつだったのか、どんどん記憶があやふやになります。
久しぶりの日本で驚いたこと。”この列車は3分遅れで発車いたしました。お急ぎのところご迷惑をおかけし申し訳ありません”との車内アナウンス。たった3分の遅れで謝罪。5分間隔で後続車列車が来るスピーディーな街東京では謝罪に値することであろうと思いはするものの、日本人の忙しさを実感します。ベースにその時間感覚を持つ日本人にとって、時間通りに物事が動かないのが常と言ってもよいインドネシアの時間感覚は、時にとってもルーズに感じられます。電車も時刻表はあって無いようなもので、単に来たら乗る。トランスジャカルタなどバスには時刻表すら存在せず、ただただ待ちます。アパートのメンテナンスの約束も、何時間待っても来なくて挙句の果てには今日は行けないとの連絡。そんなことも日常茶飯事です。距離的には30分で行けるところへも、ジャカルタではひど過ぎる渋滞により場合によっては2時間もかかるという環境でもあるので、仕方がないというあきらめの心境もあったりします。
車内アナウンスに話戻って、”車内でお読みになった新聞・雑誌などは各自でお持ち帰りください”、”車内美化にご協力お願いします”、”携帯電話での通話は他のお客様のご迷惑になりますのでおやめください”、”お忘れ物の無いよう今一度お手荷物をご確認ください”etc. こんな気配りアナウンスも日本ならではと感じます。ただし、”お年寄りや体の不自由な方に座席をお譲りください” インドネシアではこんなアナウンスがなくても、イスラム教の教えの影響もあるのか、自発的に席を譲ることが普通に行われていて、体力の消耗が激しい暑い気候下、体の不自由な人、お年寄りや小さな子供、女性を見かけると特に男性は率先して席を立とうとする傾向が見られます。若者すらも疲れ切っている日本人は、こういった気配りを少々忘れかけているかもしれません。
ジャカルタを走る電車は、日本で使われなくなった車輛が下取りされて使われています。なので、鉄道駅周辺はローカルな市場が立ち並んだり屋台が出ていたりでごった返していますが、ホームに入ってくる見慣れた外観を持つ電車に乗ってしまうと、車内はまるで日本のようで懐かしい感じがし意外なほど快適です。(列車もトランスジャカルタも、女性専用車両や専用エリアが必ず設置されているので、男性はお乗りの際ご注意を。)
なお、ジャカルタ市内の公共交通機関の乗車は、私が知る限り、初回にチャージ式のプリペイドカードを窓口で購入し、窓口でチャージを依頼する形式です。久々の日本で私ですら一瞬戸惑った駅の自動券売機。チャージするカードを置く場所、お札投入口、小銭投入口、切符が出てくる場所など表記を確認しないとどれがどれやら。日本語でしか書かれていなかったので、外国人には絶対これは難しいだろうと思わざるを得ず、もしも券売機で戸惑っている外国人を見かけたらちょっと助けてあげて下さい。アルファベットを使う言語ならまだしも、独自の文字を持つ日本語は外国人からすると相当に難解だろうと思う今日この頃です。
3.道路は横断歩道で渡る
当たり前でしょう。と言われてしまいそうですが、そもそもインドネシアの道路に横断歩道や信号機はものすごく少ないです。でもそれが当り前な現地の人々は、どこでもかまわずうまくタイミングを見計らって道路を渡っていきます。ジャカルタにおいてはもちろん交通量が多くひっきりなしに車がやってきますが、慢性的渋滞でノロノロとしか進まないから大丈夫、と言われても私は未だに怖くて道路を横断できません。どうしても渡る必要がある場合には渡ろうとする現地の人の後ろに急いでくっついて渡るとか、車の途切れを延々と待っていたら近くにいたおじさんが車を止めて渡らせてくれたりと、ほぼほぼ人頼みです。車はまだしも死角から飛び出してくるバイクがどうにも危険で見ているこっちはハラハラしますが、子供ですら慌てもせず堂々と渡っていくところを見ると、運転する側も常に人が横切るという状況を当然のこととして運転しているので、うまくその歩みに同調させられるのだなと感心するばかり。
といった環境から日本にくると、横断歩道のないところでは車はほぼ止まるということを前提としていないので、基本的には横断歩道の手前までスピードを保っていて、この環境ではさすがのインドネシア人も道路途中で横断するのは無理でしょう。もしインドネシア人が日本に来たら、絶対にちゃんと横断歩道で渡らないとダメだよと言ってあげないと、などと考えてしまいました。
冒頭、日本の自由に歩き回れるところが良いと書きましたが、横断歩道が無いこと含め何故ジャカルタの町は自由に出歩けないのかというと、原因は歩道の未整備。道路脇に歩道らしきものがあるかと思いきやそのど真ん中にすくすくと育つ大木が立ちはだかっていたり、舗装がされていなくてガタガタなのはまだしも、突如大きな穴が出現したり、ここは行けそうと思いきやその区画が終わるとその先は歩道が消失していたり、どう考えても人が歩くことを想定したつくりにはなっていないのです。せっかく整備された歩道があったとしても、客待ちをするバイクタクシーの待機場所となってたくさんのバイクが停まっていたり、平然と屋台が構えられていたりということもあります。そもそも暑いので、徒歩でずっと歩き続けるための道が必要という発想が薄いのかもしれません。
4.素材を味わう日本の料理
日本の飲食店に入ると、お冷とおしぼりが出され、まず一息ついてからオーダーといった流れが通常ですが、飲料水が無料で出される国は珍しいでしょう。インドネシアでは私は、食材を洗うにも、うがいや歯磨きをするにもミネラルウォーターを使用していますが、日本に帰ってくるとひねった水道からの水そのままですべてOKというのはすごいことだなと感じます。ジャカルタでも部屋に引かれた水道に浄水器を設置することも可能ですが、設置スペース・工事(賃貸アパートではオーナーの許可が必要)・費用と要相談といったところでしょうか。
そして料理ですが、まずからして日本の食材は取り扱いが丁寧で鮮度もよくおいしいので、シンプルな味付けで素材の味わいを楽しむというのが醍醐味だと思うのですが、インドネシア料理は食材よりもスパイシーな味付けを楽しんでいるようなイメージで、必ずといってよいほど料理には唐辛子をメインに種々香味野菜をすり潰し油でうまみを引き出したサンバルという辛いソースが添えられてきます。以前、日本に出張に来たインドネシア人がどうにも日本の料理は味が物足りないらしく箸が進まないようだったので、インドネシア食材店でサンバルソースを購入し渡したところ、日本に居る間中レストランでは必ずそのボトルを取り出して、嬉しそうに何にでもそれをかけて食べていました。日本の味を味わってほしい気もしつつ、食べなれた味が落ち着くというのもわかる気もしつつ。
ちょっとしたカフェでも大きな違いが感じられます。コーヒーに添えられるお砂糖は日本では一包3g程度のものやダイエットシュガーが一般的ですが、インドネシアでは一包8gのどっしりとしたお砂糖2包にクリームが添えられて出てくるというくらい、インドネシア人は甘いのがお好みです。コーヒーをブラックで飲むと言ったら、そんな苦いだけのもの何がおいしいのかと言われたりしますが、日本で飲み慣れているアラビカ種よりも、少々ナッティーで粉っぽい印象のロブスタ種がよく使用されているようなので、確かにロブスタ種のコーヒーであれば甘味を加えてクリームでまろやかにした方が飲みやすいというのはわかる気もしますが、実際にはそんな香味の問題ではなく、暑くて体力を消耗する気候下で糖分補給はある程度必要なのかもしれません。
なお、日本のカフェやファーストフード店では、食後はセルフサービスで自分で食器等片付けますが、インドネシアでは食べ終わったらそのままで片付けは店員さんの仕事です。けれど手が回らずお皿がいつまでもテーブルに乗ったままということもよくあり、食べた人が各々片づけることの効率の良さを実感しますが、慣れとは怖いもので、半年ぶりの日本のカフェでテーブルにカップを放置したまま帰りそうになり慌てて片づけに戻りました。
5.世界一綺麗な日本のトイレ
日本旅行をしてきたという外国人に、日本でどこが一番良かった?と聞くと、京都のお寺とか北海道の雪景色などという予期していた回答を裏切り、「トイレがきれい!」との即答。外国人ツーリストにとって、必ずと言っていいほど日本のトイレの綺麗さは印象に残るようですが、今回の帰国時それを実感。空港のトイレの便座に久々躊躇なく座ることができることになんとも感動し、デパートのトイレに至ってはくつろぎたくなるようなメイクアップルームもあったりで、これは日本の旅の思い出にランクインするのも納得です。
この注意書き、インドネシアのみならず中国でも見かけましたが、羽田空港のトイレでも見つけて思わず記録写真。便座に乗らないようにとの注意書きです。こんな不安定な便座に上がろうという人がいるのだろうかと首をひねってしまいますが、実際に靴底の型の汚れが便座についているのを見かけることがありますし、海外のトイレで便座が汚れていたり割れてしまっていたりする原因の一つとなっているようです。アジア諸国では、日本で和式と言われるスタイルのトイレが従来タイプであるところが多いとみえ、洋式のトイレの使い方が浸透しきっていないケースがあるようです。逆に考えると、洋式に慣れていない人が突然このトイレに出くわした時の戸惑いが心配になります。日本でも移行期には選べるなら慣れた和式を選ぶという人も多かったのではないでしょうか。
ついでに、上記表示左側のトイレットペーパーを流すことについても、排水の整備が良くない国ではトイレに紙を流すと詰まってしまうので備え付けのゴミ箱に捨てるのが一般的となっているところもよくあり、それが通常な人々にとっては流してしまって大丈夫なのだろうかとの不安がよぎるかもしれません。
なお、日本ではトイレの男女マークは黒・赤で色分けされていることが多いですが、インドネシアではどちらも黒で、描かれている絵も少々わかりづらかったりします。
・KHUSUS WANITA:女性専用
・KHUSUS PRIA:男性専用
お間違えの無きように。
また、トイレに限らずインドネシアでレジや受付窓口など並列して対象が存在する際の並び方は、一列に並んで分散していくいわゆるフォーク並びではなく、個々に対して並ぶ形式が一般的です。手前で一列に並んでいるつもりが、後から来た人が何食わぬ顔で奥の扉前に直接並んでしまって、順番を抜かされたように感じたりしてしまいますが、郷に入れば郷に従えで、周囲の状況に習っておきましょう。
<まとめ>
小さなことまで言いだすときりが無いくらい、国が違えば当たり前が当り前ではないという事実が次々と目に留まります。異国においてはその地の人々のやり方を尊重する。自国においては、外国人がルールを守らない!と決めつける前に、その人の国ではそういう習慣が無いのかもしれないという風にまずは考えてみることが必要だと思います。
日本は急速に経済発展し生活様式も国際化して海外の様式を次々取り入れてきましたが、例えばフォーク並びが定着し始めたのは1990年代とのことですので、日本で今や考えられないと思ってしまっている物事も歴史的にはまだほんの数十年しかたっていないことも多々あります。公共のトイレが世界に誇れるほどこんなに綺麗になったのも、ここ数十年のことではないでしょうか。時代の変化に伴ってルールも変化していきます。国や環境によってルールも異なります。さまざまな出来事に対し柔軟な思考で対応したい、そんなことを思った新年でした。
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